太良町の決算は、一般会計のほかに特別会計が2本、公営企業会計が4本の計7会計で構成されています。 審査日程や参照する資料体系が異なるため、全体の配置を押さえておくことが重要です。
太良町の全会計の決算規模と収支状況です(企業会計は損益ベース)。
| 会計区分 | 会計名 | 歳入・収益(千円) | 歳出・費用(千円) | 実質収支・純損益 |
|---|---|---|---|---|
| 一般会計 | 一般会計 | 7,969,679 | 7,769,961 | +199,718 |
| 特別会計 | 後期高齢者医療 | 172,747 | 170,674 | +2,073 |
| 国民健康保険 | 1,424,269 | 1,290,735 | +133,534 | |
| 公営企業会計 | 水道事業 | 48,056 | 40,868 | +8,057 |
| 簡易水道事業 | 48,142 | 91,412 | △43,271(営業損) | |
| 漁業集落排水事業 | 6,156 | 45,018 | △38,862(営業損) | |
| 町立太良病院事業 | 920,685 | 1,087,388 | △166,703(医業損) |
※企業会計の簡易水道・漁業集落排水・太良病院は、営業段階の損失を「一般会計補助金」および「長期前受金戻入」で補填して最終損益を黒字化しています。
介護保険事業は「杵藤地区広域市町村圏組合」が保険者となって広域で運営しているため、太良町独自の特別会計としては計上されません。町の負担分は一般会計(民生費・老人福祉総務費)から組合への負担金(令和7年度:3億5,549万円)として支出されます。
一般会計歳出の5.6%が、特別会計・企業会計への繰出・補助に充てられています。
一般会計の歳入総額(79.7億円)における財源内訳です。地方財政計画に基づき、自主財源の不足分を国県等の依存財源が補完する構造となっています。
太良町の財政力指数は 0.260(前年0.26)となっており、県内町村平均(0.51)や類似団体平均(0.27)と比較しても、標準的な行政需要を賄うための自前の税源が限られている現状を示しています。 国の財政保障制度(普通交付税)や特定目的補助金を適正に活用しつつ、自主財源の確保やふるさと納税等の寄附金の有効活用が重要な論点となります。
歳入総額 79億6,968万円(前年比 +6億0,961万円、+8.3%)の主要科目構成です。
| 科目名 | 区分 | R7決算額(千円) | 構成比 | 前年比増減(千円) |
|---|---|---|---|---|
| 地方交付税 | 依存財源 | 2,913,031 | 36.6% | +112,857 |
| 国庫支出金 | 依存財源 | 1,107,569 | 13.9% | +235,268 |
| 繰入金(基金等) | 自主財源 | 978,355 | 12.3% | +30,704 |
| 町税 | 自主財源 | 806,097 | 10.1% | +32,499 |
| 寄附金(ふるさと納税等) | 依存財源 | 611,377 | 7.7% | +102,439 |
| 県支出金 | 依存財源 | 453,371 | 5.7% | △32,490 |
| 町債(地方債) | 依存財源 | 353,300 | 4.4% | +151,319 |
| その他(譲与税・手数料・諸収入等) | — | 746,579 | 9.3% | +77,013 |
| 合計 | — | 7,969,679 | 100.0% | +609,609 |
財政力指数は「基準財政収入額 ÷ 基準財政需要額」の過去3カ年平均です。太良町の場合、標準的な行政に必要な経費(需要額)の約26%しか自前の税収等でまかなえません。 残りの約74%は、全国どこでも一定水準の行政サービスを受けられるよう国が地方交付税(普通交付税 約25億円)として交付することで、自治体間の財力格差が是正されています。
令和7年度の一般会計歳出では、予算現額(86.7億円)に対し支出済額が77.7億円となり、約9.0億円(予算比 10.4%)の執行残が生じています。
「事業に着手しているが、年度内に完了せず翌年度に持ち越した」額です。
| 款・目 | 事業概要 | 繰越額(千円) | 繰越率 |
|---|---|---|---|
| 商工費・商工業振興費 | 地域共通商品券換金、商工業振興補助等 | 172,328 | 71% |
| 農林水産業費・特産地づくり推進費 | さが園芸888整備支援補助金等 | 121,309 | 72% |
| 土木費・道路維持費 | 橋梁維持補修、道路メンテナンス等 | 84,717 | 19% |
| 農林水産業費・農地費 | 農地整備・農道舗装等 | 35,168 | 22% |
| 災害復旧費・道路橋梁等復旧費 | 道路・橋梁災害復旧工事 | 31,810 | 65% |
「予算を計上したが、最終的に使わずに終了した」額です。
| 款・目 | 不用の背景 | 不用額(千円) | 不用率 |
|---|---|---|---|
| 総務費・ふるさと応援寄附金基金費 | 当初10.01億→3億減額補正(現額7.0億)後、実績6.1億 | 90,022 | 12.9% |
| 総務費・企画財政管理費 | 予備的枠・見込み計上(4年累計で約4億円不用) | 84,649 | 13.9% |
| 土木費・道路維持費 | 入札差金(執行残)、部分補修の見送り等 | 37,816 | 8.3% |
| 民生費・心身障害者福祉総務費 | 給付実績と申請見込みの差額等 | 22,523 | 5.4% |
| 衛生費・予防費 | 受診率約5割に対し対象者全員ベースで積算(毎年度同規模不用) | 15,286 | 24.6% |
| 商工費・観光費 | 観光誘客補助等の執行残 | 12,441 | 11.4% |
歳入側で予算現額を下回った主な内訳は以下の通りです:
| 歳入科目 | 予算現額(千円) | 収入済額(千円) | 差額(千円) |
|---|---|---|---|
| 国庫支出金 | 1,380,774 | 1,107,569 | △273,204 |
| 繰入金(基金等) | 1,236,404 | 978,355 | △258,048 |
| 県支出金 | 569,182 | 453,371 | △115,811 |
| 寄附金(ふるさと納税等) | 701,402 | 611,377 | △90,024 |
| 町債(地方債) | 401,100 | 353,300 | △47,800 |
| 合計(その他含む) | — | — | △789,706 |
地方自治体の国県補助事業(特定財源)は、「事業を実施して実績報告を出さないとお金が入らない(後払い・精算交付)」仕組みが原則です。 したがって、歳出側で工事が繰り越されたり(4.5億)、不用になったり(4.5億)すると、対応する国の補助金や町債も連動して未収になります。 「税収が集まらなかった」のではなく、「事業が年度内に動かなかった結果として特定財源が入らなかった」という関係にあります。
年度ごとの収支(フロー)だけでなく、資産・負債(ストック)の健全性を中長期的な視点から確認することが求められます。
今年度の実質単年度収支は △2億 0,041 万円となっており、2年連続の赤字収支です。 公債費抑制により借金残高を圧縮しつつも、財源調整として財政調整基金から約2.0億円の取り崩しを行っており、基金の取り崩しペースと将来の投資需要(公共施設更新等)とのバランスを点検する局面に入っています。
一般会計が保有する基金(町の貯金)の総額は 65億0,470万円(前年度末比 △2億4,564万円)です。
| 基金名 | R6年度末残高 | R7積立額 | R7取崩額 | R7年度末残高 |
|---|---|---|---|---|
| 財政調整基金 | 1,533,123 | 82,000 | 200,000 | 1,415,123 |
| 減債基金(借金返済用) | 1,519,377 | 2,057 | 2,500 | 1,518,934 |
| ふるさと応援寄附金基金 | 1,357,241 | 609,977 | 693,511 | 1,273,707 |
| 公共施設整備基金 | 861,949 | 918 | 0 | 862,867 |
| 地域づくり事業基金 | 574,626 | 464 | 1,500 | 573,590 |
| 下水道等事業基金 | 346,791 | 300 | 41,861 | 305,230 |
| その他(山林・福祉・スポーツ等) | 556,229 | 34,666 | 36,650 | 554,245 |
| 合計(千円) | 6,750,336 | 730,382 | 976,022 | 6,504,696 |
太良町のすべての借金(一般会計債+公営企業債)の残高一覧です。
| 会計名 | R6年度末残高 | R7発行額 | R7元金償還額 | R7年度末残高 |
|---|---|---|---|---|
| 一般会計 | 4,187,824 | 353,300 | 524,761 | 4,016,363 |
| 町立太良病院事業 | 1,246,887 | 13,300 | 76,250 | 1,183,937 |
| 簡易水道事業 | 221,945 | 35,300 | 11,465 | 245,780 |
| 漁業集落排水事業 | 103,072 | 5,200 | 17,126 | 91,146 |
| 水道事業 | 71,737 | 0 | 2,599 | 69,138 |
| 総合計(千円) | 5,831,465 | 407,100 | 632,201 | 5,606,364 |
決算書の「形式収支(歳入−歳出=1.99億円)」や「実質収支(翌年度繰越財源を控除=7,999万円)」は表面上黒字ですが、 前年度の実質収支との差額から「財政調整基金への積立(8,200万)」を加え、「基金取崩額(2.00億)」を差し引いて真の単年度収支を計算すると、 △2億0,041万円の実質赤字となります(前年度 △1億1,754万円に続き2年連続赤字)。 地方債を圧縮する一方で、貯金(基金)を取り崩して収支を合わせる構造が続いています。
地方自治体の財政構造がどの程度弾力性を保っているかを示す経常収支比率の現状です。
経常収支比率は、毎年度経常的に収入される一般財源のうち、人件費・扶助費・公債費などの固定的な経費に充当された割合を示します。 太良町は 92.6% と高止まりしており、投資的事業や新規政策に充当できる一般財源の余力が 7.4% に限られていることを意味します。歳出の効率化と財源創出が引き続き求められる水準です。
地方自治体の財政構造の弾力性を測る最も代表的な指標です。
| 性質区分 | R4決算(千円) | R7決算(千円) | 4年増減率 | 増減の主な要因 |
|---|---|---|---|---|
| 人件費系経費 | 1,064,486 | 1,261,205 | +18.5% | 会計年度任用職員制度(勤勉手当支給等)および給与改定 |
| 扶助費(社会保障) | 447,128 | 595,866 | +33.3% | 障害福祉サービス給付費、児童手当、高齢者福祉給付の増 |
| 公債費(元利償還) | 538,214 | 540,632 | +0.4% | 実質公債費比率は 6.5% → 6.8% へ微増傾向 |
| (参考)普通建設事業費 | 970,043 | 616,772 | △36.4% | 工事請負費等のハコモノ投資は縮減傾向 |
公共事業(工事請負費)が縮減する一方で、人件費と社会保障給付(扶助費)が急増しており、固定費の比率を押し上げています。
| 区分 | 経常収支比率 | 実質公債費比率 | 財政力指数 | 評価・見方 |
|---|---|---|---|---|
| 太良町(R7) | 92.6% | 6.8% | 0.260 | 固定費が高止まりし裁量余力が限定的 |
| 太良町(R6) | 92.0% | 6.5% | 0.260 | 1年間で0.6ポイント悪化 |
| 佐賀県内町村平均 | 90.4% | 7.9% | 0.510 | 県平均より2.2ポイント硬直的 |
| 全国類似団体(過疎町村) | 88.4% | 9.3% | 0.270 | 類似町村平均より4.2ポイント高い水準 |
太良町は類似団体や県内町村平均と比較しても経常収支比率が高く、一度大きな災害や突発的な財政需要が発生した場合に、一般財源からの弾力的な支出が難しい体質となっています。 ふるさと納税や国県特定補助金、過疎債等の有利な起債を戦略的に獲得・配分し、義務的経費を適正規模に管理することが求められます。
決算書は「1年間でいくら入って、いくら出たか(フロー)」を記録しますが、自治体の真の体力と持続可能性は「何が蓄積され、何が削られているか(ストック)」を見なければ分かりません。 太良町の決算は、すべての土台である**「人口・地域の基盤」**、町民生活を支える**「社会資本・インフラ」**、そしてその裏付けとなる**「財政の資産と負債」**が密接に連動して動いています。
人口や給水世帯(人口基盤)が減少しても、道路や水道管(モノのストック)の総延長は自動的には短くなりません。 その結果、配水量の31.8%が料金にならない簡易水道や、区域内人口468人に対し年間4,436万円(1人あたり年9.5万円)の一般会計繰出金を投入する漁業集落排水のように、 **「人口減少に伴いインフラの1人あたり維持管理コストが急激に跳ね上がる構造」**が生じています。
人口の約4人に1人(24.8%)が75歳以上となる中、一般会計の社会保障扶助費は4年で**33.3%増**、人件費は**18.5%増**となりました。 毎年の「流れて消える経常固定費」が一般財源の92.6%を占めるため、将来のインフラ更新やまちづくりに回せる普通建設事業費(工事請負費)が**36.4%削減**され、投資余力が著しく制約されています。
人やインフラの構造的赤字を埋めるため、一般会計から太良病院・特別会計・下水道等へ年間**4.4億円(歳出の5.6%)**が繰り出されています。 この持ち出しを支えるため、財政調整基金から2.0億円を取り崩すなど、**「最終的に財政ストック(基金)を取り崩して帳尻を合わせている」**のが決算の実態です(実質単年度収支 △2.00億円)。
| 構造の階層 | 指標・実数値 | 決算書上の表れ方(フロー) | 将来的な影響と課題 |
|---|---|---|---|
| ① 人口・地域の基盤 | 総人口 7,632人 75歳以上 24.8% 給水人口年90人減 |
・町税の伸び悩み(+3,250万のみ) ・扶助費の急増(4年で+33.3%) ・水道利用料の減収 |
課税ベースの縮小と交付税算定額の減少。社会保障関係経費のさらなる増加。 |
| ② 社会資本・インフラ | 簡水管路 75km (老朽管 12km) 上水老朽管 7.5km |
・工事請負費の縮減(▲36.4%) ・維持補修費の高止まり ・企業会計営業損失 |
人口減に合わせたインフラの再編・集約(ダウンサイジング)が進まないと維持不能に。 |
| ③ 財政資産と負債 | 基金 65.0億円 (4年で▲6.9億) 地方債 56.1億円 |
・財政調整基金取崩 2.0億円 ・実質単年度収支 △2.0億円 ・他会計繰出 4.4億円 |
借金は減るが貯金も減少。将来の大規模改修ピーク時に財源が枯渇するリスク。 |
以上の財務構造を踏まえ、委員会において確認・議論を深めるべき論点を3点に要約します。
約9.0億円に及ぶ執行残について、入札環境や工期設定、資材高騰などの客観的要因を把握し、次年度事業計画への反映を確認する。
地方債縮減の取り組みを評価しつつ、基金取り崩し(△2.0億円)が続く中での中長期的な財政運営方針と施設更新需要の整合性を検証する。
経常収支比率92.6%を踏まえ、社会保障関係費や維持管理経費の推移を見極め、町単独の新規施策を支える財源の持続性を確認する。